EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)へ乗り換えると、ガソリン代や税制面だけでなく、「自動車保険も安くなるのでは?」と気になる人も多いでしょう。
実際、一部の保険会社ではEVやPHEVを対象とした割引制度があります。ただし、EVならどの保険会社でも一律に安くなるわけではありません。
EV・PHEVの保険は「EV割引があるか」だけで選ばないことが重要です。
確認すべきなのは、①割引の対象条件、②車両保険込みの総保険料、③バッテリーや充電設備の補償、④電欠時のロードサービス、⑤ASV割引など他の割引との関係です。
この記事では、EV・PHEVの自動車保険について、割引制度だけでなく、事故・故障・電欠・中古EV・充電設備まで含めて詳しく解説します。
EV・PHEVなら自動車保険は本当に安くなる?
結論からいうと、EV・PHEVだから必ず保険料が安くなるとは限りません。
一部の保険会社にはEV向けの割引がありますが、自動車保険料そのものは、等級、年齢、車種、型式別料率、年間走行距離、運転者範囲、車両保険など多くの条件で決まります。
「EV割引がある=その保険会社が一番安い」ではありません。
たとえば、EV割引が1,500円あっても、もともとの保険料が他社より8,000円高ければ、最終的には他社の方が安い可能性があります。
実際にあるEV向け自動車保険割引
2026年10月時点で、公式情報を確認できる代表例として、アクサ損害保険とソニー損保があります。
| 保険会社 | 制度名 | 主な対象 | 割引額 | 主な条件 |
|---|---|---|---|---|
| アクサ損害保険 | EV割引 | 所定のEV・PHEV | 1,500円 | 型式発売年月が2016年1月以降など |
| ソニー損保 | 電気自動車割引 | 所定の電気自動車・燃料電池自動車 | 1,000円 | 保険開始月が初度登録後37か月以内など |
同じ「EV割引」でも条件は同じではありません。
保険会社ごとに、対象車種・登録時期・型式・PHEVの扱いなどが違います。
アクサのEV割引|EV・PHEVで1,500円割引
アクサ損害保険では、同社が定めるEVまたはPHEVの場合、保険料を1,500円割り引くEV割引があります。
公式案内では、自動車保険の場合、型式発売年月が2016年1月以降で、アクサが定めたEVまたはPHEVであることが適用条件とされています。
・所定のEVが対象
・所定のPHEVも対象
・割引額は1,500円
・型式発売年月などの条件あり
・継続契約でも条件を満たせば適用
一方で、ガソリン車を後から電気自動車へ改造した場合は、アクサのEV割引対象外とされています。
「電気で走るようになった車」なら何でも対象、という制度ではありません。
保険会社が定める型式などで判断されます。
ソニー損保の電気自動車割引|1,000円+37か月以内がポイント
ソニー損保では、所定の条件を満たす電気自動車について、保険料を1,000円割り引く「電気自動車割引」があります。
主な条件は次の3つです。
1.用途車種
自家用普通乗用車・自家用小型乗用車・自家用軽四輪乗用車のいずれか
2.同社所定の電気自動車
電気を動力源とし、内燃機関を持たない車。燃料電池自動車も含まれます。
3.初度登録後37か月以内
保険開始月が初度登録または初度検査後37か月以内であること
つまり、同じEVでも、登録から時間が経過した中古EVでは割引対象外になる可能性があります。
EV・PHEV・HV・FCVは自動車保険では同じ扱いではない
「電動車」「エコカー」という言葉は広い意味で使われますが、自動車保険の割引条件では区別されます。
| 種類 | 特徴 | EV系割引の考え方 |
|---|---|---|
| EV | 電気だけで走行 | 対象になりやすい |
| PHEV | 外部充電可能・エンジンも搭載 | 会社によって対象が分かれる |
| HV | エンジン+モーター | EV割引対象とは限らない |
| FCV | 水素と酸素で発電 | 会社によって電気自動車扱いになる場合あり |
「ハイブリッド車だからEV割引が使える」とは限りません。
必ず契約する保険会社の対象条件を確認してください。
中古EVでも割引される?
中古EVだから自動的に対象外になるわけではありません。
ただし、ソニー損保のように初度登録からの期間条件を設けている場合があります。
| ケース | 考え方 |
|---|---|
| 新車EV | 登録時期条件を満たしやすい |
| 初度登録から2年の中古EV | その他条件を満たせば対象になり得る |
| 初度登録から4年の中古EV | 37か月以内条件がある会社では対象外になり得る |
中古EV購入時は車検証の「初度登録年月」を確認しましょう。
具体例1|EV割引1,500円でも最安とは限らない
たとえば、同じ補償内容で見積もった結果が次のようになったとします。
| 会社 | 割引前 | EV割引 | 最終保険料 |
|---|---|---|---|
| A社 | 72,000円 | ▲1,500円 | 70,500円 |
| B社 | 65,000円 | なし | 65,000円 |
EV割引があるA社より、専用割引のないB社の方が5,500円安い結果になります。
※上記金額は仕組みを説明するための仮定例です。
EVでは「割引」より車両保険の条件が重要になることもある
EVの保険を比較するときは、EV割引だけでなく、車両保険を付けた状態の総保険料を見ることが重要です。
車両保険は、衝突・接触、盗難、火災、台風・洪水など、契約タイプに応じた偶然な事故による車両損害を補償します。
比較時にそろえたい条件
・車両保険のタイプ
・車両保険金額
・免責金額
・新価特約等の有無
・盗難補償の範囲
「EV割引で1,000円安い」より、車両保険の条件差で数千円以上変わることもあるため、必ず総額で比較します。
EV特有の補償で確認したいこと
EVの駆動用バッテリーは車両保険なら何でも補償される?
EVで特に気になるのが、高電圧の駆動用バッテリーです。
ここで重要なのは、「バッテリーの故障・劣化」と「事故による損傷」を分けて考えることです。
経年劣化や自然な性能低下まで、通常の車両保険で何でも補償されるとは考えない方がよいです。
一方、衝突など車両保険の補償対象となる事故によって車両・バッテリーに損害が発生した場合は、契約内容に応じて車両保険の対象となる可能性があります。
・事故によるバッテリー損傷の扱い
・故障・劣化は対象になるか
・メーカー保証との役割分担
・全損判定になった場合の保険金額
自宅のEV充電設備まで自動車保険で補償される?
自宅に普通充電器や充電設備を設置しているEV・PHEVオーナーも増えています。
しかし、車両本体と自宅の充電設備は同じものではありません。
保険会社によってはEV向けに充電設備の補償特約を用意している場合があります。
たとえばアクサでは、同社指定のEVまたはPHEVの場合にセットできるEV充電設備補償特約があります。
車両本体 → 車両保険
駆動用バッテリー → 損害原因と契約内容を確認
自宅充電設備 → 専用特約や火災保険等の補償範囲を確認
EVの電欠はロードサービスで対応できる?
EV特有の不安として「電欠」があります。
ロードサービスの内容は保険会社によって違いますが、EV電欠への対応を強化している会社があります。
ソニー損保
ソニー損保では、EVが電欠で自力走行不能となった場合、ロードサービスのレッカーサポートで最寄りの充電施設へ搬送する案内があります。
2024年3月以降は、このEV電欠時の搬送について、保険期間中の利用回数制限をなくしたと案内されています。
損保ジャパン・SOMPOダイレクト
損保ジャパンとSOMPOダイレクトでは、EV電欠時の現場駆け付け急速充電サービスを展開し、2026年1月に全都道府県へ拡大したと発表しています。
EVでは「レッカーして充電施設へ運ぶ会社」と「現場で急速充電に対応する会社」があります。
ロードサービスの違いはEV保険比較で重要なポイントです。
電欠時のロードサービスで確認したい項目
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 現場充電 | その場で充電できるか |
| レッカー | 最寄り充電施設まで搬送してもらえるか |
| 利用回数 | 年間回数制限があるか |
| 事前連絡 | 保険会社への事前連絡が必要か |
| 対象範囲 | EVのみかPHEVも含むか |
自分で先に業者を手配すると、ロードサービスの対象外になる場合があります。
電欠時はまず契約先のロードサービス窓口へ連絡しましょう。
EV割引とASV割引は別の制度
EVには衝突被害軽減ブレーキなど先進安全装備を搭載した車が多いため、EV割引とASV割引を混同しやすいところです。
| 割引 | 主な判断基準 |
|---|---|
| EV割引 | EV・PHEVなど車両の種類・型式 |
| ASV割引 | 衝突被害軽減ブレーキ等の装備・所定条件 |
EVだから自動的にASV割引になるわけではありません。
逆に、ガソリン車でもASV割引の条件を満たす場合があります。
EVに買い替えたら保険会社への「車両入替」も必要
ガソリン車からEVへ買い替えた場合、現在の自動車保険をそのまま放置せず、車両入替の手続きを行います。
・新しい車の型式
・車名
・初度登録年月
・車両所有者
・納車日
・車両保険を付ける場合の車両価格等
EV割引がある保険会社の場合、車両入替によって途中から割引対象になるケースもあるため、保険会社へ確認しましょう。
中古EV・PHEVで特に注意したいケース
具体例2|中古EVを買ったときのチェック手順
たとえば、初度登録から2年6か月経過した中古EVを購入したとします。
チェック順
1.車検証で初度登録年月を確認
2.EV割引対象車種か確認
3.37か月以内などの期間条件を確認
4.車両保険を付けた総額を見積もる
5.電欠ロードサービスを確認
6.充電設備の補償を確認
「中古だから割引なし」と決めつけず、具体的な登録時期と各社条件を確認することが重要です。
具体例3|PHEVならどのEV割引でも対象?
PHEVは外部から充電できるため、EVと同じ扱いだと思われがちです。
しかし、アクサでは所定のPHEVをEV割引対象とする一方、ソニー損保の電気自動車割引では、同社が定める「内燃機関を有しない電気自動車」が対象とされています。
PHEVを契約する場合は、保険会社ごとに対象可否を確認してください。
EV保険を比較するときに「割引率」だけ見てはいけない理由
EV保険比較で見るべきなのは、次のような総合条件です。
✓ EV専用割引の有無
✓ PHEV・FCVの対象可否
✓ 中古EVの登録時期条件
✓ 車両保険の保険料
✓ 免責金額
✓ バッテリー事故損害の扱い
✓ 充電設備補償
✓ 電欠時のロードサービス
✓ レッカー条件
✓ ASV割引等の他割引
✓ ネット割引等を含む最終保険料
EV保険を比較するときの判断ポイント
EV・PHEVの保険でよくある勘違い
| 勘違い | 実際の考え方 |
|---|---|
| EVなら必ず保険料が安い | 割引があっても総保険料は他条件で変わる |
| HVもEV割引対象 | 会社ごとの条件確認が必要 |
| PHEVはどの会社でもEV扱い | 対象範囲は会社ごとに違う |
| 中古EVは全部対象外 | 登録時期条件次第で対象になる場合がある |
| バッテリー劣化も車両保険で出る | 事故損害と経年劣化・故障は分けて確認 |
| 電欠ならどの会社も同じ対応 | 現場充電・搬送などサービスが異なる |
EV購入前に自動車保険で確認したい10項目
□ EV割引があるか
□ 自分の車種・型式が対象か
□ PHEVなら対象条件を確認したか
□ 初度登録からの期間条件があるか
□ 車両保険込みで見積もったか
□ 免責金額を確認したか
□ バッテリー損害の扱いを確認したか
□ 自宅充電設備の補償を確認したか
□ 電欠ロードサービスを確認したか
□ 他社と同条件で比較したか
EVを買ったあとも更新時に見直した方がいい
EV割引は、登録からの経過期間などによって将来対象外になることがあります。
そのため、最初の契約で安かった保険会社が、数年後も一番安いとは限りません。
更新時に再確認
・EV割引が継続するか
・車両保険金額が下がっていないか
・新しいEV向け特約が追加されていないか
・ロードサービス内容が変わっていないか
・他社との保険料差が広がっていないか
EV・PHEVの保険会社を選ぶ手順
STEP1 必要な補償を決める
↓
STEP2 EV割引の対象可否を確認する
↓
STEP3 車両保険込みで見積もる
↓
STEP4 電欠・充電設備・バッテリー関連を確認する
↓
STEP5 同じ補償条件で複数社を比較する
この順番なら、「EV割引があるから」という理由だけで保険会社を決める失敗を防ぎやすくなります。
EV・PHEVこそ複数社の見積もりを比較する
EV・PHEVには専用割引や専用特約がある一方で、対象条件やロードサービス内容は会社ごとに異なります。
さらに、最終的な保険料はEV割引だけでは決まりません。
EV割引の金額ではなく、必要な補償・車両保険・EV向けサービスを付けた状態の「最終保険料」で比較しましょう。
EVへの買い替えを機に、同じ補償条件で複数社の見積もりを比較すると、自分の車に合う保険を見つけやすくなります。
まとめ|EV割引だけでなく「事故・電欠・充電」まで見て選ぶ
この記事のまとめ
・EV向け自動車保険割引は実際にある
・アクサは所定のEV・PHEVで1,500円割引
・ソニー損保は所定の電気自動車で1,000円割引、37か月以内などの条件あり
・HVやPHEVの扱いは保険会社によって異なる
・中古EVは初度登録年月を確認する
・EV割引がある会社が最安とは限らない
・車両保険込みの総額を見る
・バッテリーの事故損害と劣化・故障を分けて考える
・自宅充電設備の補償も確認する
・電欠時のロードサービス内容は会社ごとに違う
・EV割引とASV割引は別制度
・更新時にも再比較する
EV・PHEVの保険選びでは、「環境にやさしい車だから安いだろう」と考えるのではなく、自分の車がどの割引・補償・ロードサービスの対象になるのかを具体的に確認することが大切です。
