タイヤパンク交換

自動車を運転していると、突然のタイヤパンクに見舞われることがあります。特に高速道路や夜間など、慣れない場所で起きると非常に不安を感じるものです。

そんなときに頼りになるのが、自動車保険に付帯しているロードサービスの「タイヤパンク交換」対応です。このサービスを理解しておくことで、万が一の際にも冷静に対処できます。

タイヤパンク交換サービスの概要

自動車保険のロードサービスに含まれる「タイヤパンク交換」は、車のタイヤがパンクやバースト（破裂）した際に、保険会社が提携しているロードサービス業者が現場に出動し、スペアタイヤへの交換を行うサービスです。

ドライバー自身がタイヤ交換作業を行う必要がなく、特に力作業が難しい方や、工具の扱いに慣れていない方にとって非常に助かるサポートとなります。

サービスの主な内容

タイヤパンク交換サービスの基本的な内容は以下の通りです。

• 現場までの出張対応
  保険会社が提携するロードサービス業者が、トラブル発生場所（自宅・駐車場・道路上など）まで無料で出動します。
  出張料や出動にかかる費用は原則無料です。
• スペアタイヤへの交換作業
  現場でスペアタイヤが車に搭載されている場合、作業員が安全を確保した上で交換を行います。
  作業は通常15〜30分程度で完了します。
• 対応時間
  多くの保険会社では、24時間365日対応となっています。夜間や休日でも利用可能です。
• 費用負担
  基本的な出張・交換作業は無料ですが、以下の費用は自己負担になります。
  • 新しいタイヤの購入費用
  • 修理やバランス調整費用
  • 応急修理剤の追加使用費（車種による）

スペアタイヤがない場合

近年の車は軽量化や燃費向上のため、スペアタイヤを搭載していないモデルが増えています。その場合、次のような対応となります。

• 応急修理キットでの修理対応
  タイヤに小さな穴が開いた場合は、応急修理キットを使って一時的に走行可能な状態にします。
• レッカー搬送
  応急修理ができない場合や、ホイールの損傷が大きい場合は、契約に応じた無料距離範囲内で整備工場までレッカー搬送されます。

利用できる場所

タイヤパンク交換サービスは、以下のような場所で利用可能です。

• 自宅や会社の駐車場
• 路上（安全が確保できる場所）
• 高速道路のサービスエリア、パーキングエリア

⇒レッカー移動サービス

利用できる条件と注意点

自動車保険に付帯するロードサービスの中でも、「タイヤパンク交換」は非常に便利なサポートですが、すべての状況で無条件に利用できるわけではありません。

サービスを確実に利用するためには、利用条件や注意点を正しく理解しておくことが大切です。
以下では、実際にサービスを利用する際の「条件」と「注意点」を詳しく解説します。

【1】利用できる主な条件

1-1. スペアタイヤが搭載されていること

このサービスの前提条件は「スペアタイヤが車に積まれている」ことです。
ロードサービスの作業員は、既に車に積まれているスペアタイヤを使って交換を行います。

• 最近の車種では、スペアタイヤが「標準装備」ではないケースが増えています。
• スペアタイヤの代わりに「パンク修理キット（応急修理剤）」のみ搭載されている車もあります。
• スペアタイヤがない場合は「タイヤ交換」ではなく、「応急修理」または「レッカー搬送」となります。

1-2. 作業が安全に行える場所であること

安全確保ができない場所では、作業が制限されます。

• 路肩が狭い高速道路の本線上
• トンネル内や交通量の多い交差点付近
• 傾斜のきつい坂道、ぬかるみ、砂利道など

このような場所では、警察や交通管理隊の指導のもとで「安全な場所まで移動」してからサービスが提供されます。

1-3. 対応可能なタイヤトラブルであること

サービスの対象となるのは、以下のような「軽度のトラブル」です。

• 釘などによるパンク
• タイヤの空気抜け
• 走行中に異物を踏んで走行不能になった場合

一方で、次のようなケースは「現場での交換不可」と判断される場合があります。

• ホイールや足回り部品が損傷している
• 2本以上のタイヤが同時に破損している
• タイヤが完全にバーストして車両が傾いている

このような場合は、安全上の理由から「レッカー搬送」に切り替えられます。

【2】サービス利用時の注意点

2-1. 修理や部品代は自己負担

ロードサービスの目的は「応急対応」であり、「修理」ではありません。
そのため、交換後のタイヤ代や修理費用は保険対象外となります。

これらは、利用者自身が後で負担する必要があります。

2-2. 利用回数や無料範囲に制限がある場合がある

多くの保険会社では「無料で利用可能」ですが、契約内容によって以下のような制限が設けられていることもあります。

• 年1回まで無料
• 2回目以降は有料
• 無料搬送距離（例：15km、50kmなど）が設定されている

2-3. スペアタイヤの状態を事前に確認しておく

スペアタイヤが搭載されていても、空気圧が不足している・劣化していると交換しても走行できません。
定期的に次の点を確認しておくと安心です。

• 空気圧が基準値を保っているか
• ひび割れやゴムの劣化がないか
• ジャッキや工具が正常に使えるか

2-4. 高速道路上での対応は制限される

高速道路本線上では、非常に危険なため直接の交換作業は原則行えません。
その場合は、交通管理隊または警察の指示で安全な場所まで誘導し、そこでロードサービスが対応します。

2-5. 応急対応後は早めに整備工場へ

スペアタイヤはあくまで「応急用（テンパータイヤ）」であり、長距離・高速走行には適していません。
交換後はできるだけ早く、整備工場で正式なタイヤ交換を行うことが推奨されます。

サービス利用の流れ

自動車保険のロードサービスで「タイヤパンク交換」を依頼する際は、状況を正しく伝え、安全に対応してもらうことが重要です。

ここでは、実際にサービスを利用する際の流れを、通報から作業完了までの手順に沿って詳しく解説します。

【1】安全を確保する

タイヤのパンクが発生したら、まず最優先すべきは「安全の確保」です。
焦って停車すると、後続車との事故につながる可能性があるため、落ち着いて行動します。

• 可能であれば道路の左側や広い場所に車を移動させる
• 高速道路の場合は路肩や非常駐車帯に停車する
• ハザードランプを点灯して後続車に注意を促す
• 夜間は三角表示板や停止表示灯を車の後方に設置する
• 同乗者がいる場合は車外に出てガードレールの外側に避難する

安全が確保できたら、次のステップに進みます。

【2】ロードサービス窓口に連絡する

安全を確認したら、加入している自動車保険の「ロードサービス専用ダイヤル」に電話をかけます。
電話番号は保険証券・契約書・スマートフォンアプリなどに記載されています。
通報時に伝えるべき主な内容は以下のとおりです。

• 契約者の氏名・車のナンバー
• 現在地（できるだけ正確に：道路名・目印・近くの施設など）
• トラブルの内容（例：「左前輪がパンクして走行できない」など）
• 車種、色、メーカー名（現場特定のため）
• スペアタイヤが積載されているかどうか

【3】業者の出動と到着

オペレーターから手配が完了すると、サービスカーが現場へ出動します。
通常、到着までの目安は30分〜60分程度ですが、次のような場合は時間がかかることもあります。

• 交通渋滞や天候の影響
• 山間部や離島などの遠隔地
• 夜間や早朝の時間帯

【4】現場での作業開始

サービスカーが到着したら、作業員が状況を確認し、作業の可否を判断します。
作業内容は以下の流れで進みます。

1. 安全確保（発炎筒やコーンで作業スペースを確保）
2. ジャッキアップ（車を持ち上げる）
3. パンクしたタイヤの取り外し
4. スペアタイヤへの交換
5. ボルトの締め付け確認
6. 車体を下げて再度トルク確認

作業時間は通常15〜30分ほどで完了します。

【5】作業完了・確認・サイン

交換作業が完了したら、作業員が走行確認を行い、依頼者に作業内容を説明します。
依頼者は、内容に問題がなければ作業確認書（伝票）にサインをします。
その際に確認すべきポイントは次の通りです。

• スペアタイヤの空気圧は十分か
• ナットの締め付けが確実に行われているか
• 応急用タイヤである場合、どの程度の距離まで走行できるか

【6】応急対応後の対応

スペアタイヤはあくまで「応急用」です。
そのため、交換後は次の点に注意が必要です。

• 長距離・高速走行を避ける（制限速度は時速80km以下が目安）
• なるべく早く整備工場やタイヤ専門店へ行き、正式なタイヤ交換を行う
• 応急タイヤの空気圧やナットの緩みを再点検してもらう

保険会社ごとの対応例

自動車保険のロードサービスには、多くの会社で「タイヤパンク交換（スペアタイヤ交換）」が含まれていますが、内容や条件は保険会社によって異なります。

どの範囲まで無料で対応してくれるのか、どんな制限があるのかを理解しておくことは非常に重要です。ここでは、主要な保険会社の対応例を比較しながら詳しく紹介します。

東京海上日動火災保険

東京海上日動のロードサービス「ロードアシスト」では、パンク時のスペアタイヤ交換が無料で利用できます。
主な特徴

• 契約車両にスペアタイヤが搭載されている場合に限り対応
• 応急対応として30分程度で完了する軽作業が対象
• 作業員が現場に出動し、スペアタイヤへの交換を実施
• 修理費用や新しいタイヤの代金は自己負担
• 全国対応、24時間365日利用可能

東京海上日動では、「応急作業としての交換」は無料ですが、修理や部品交換までは対象外という点を理解しておく必要があります。

三井住友海上火災保険

三井住友海上の「おクルマQQ隊」は、スペアタイヤ交換を無制限で利用できる点が大きな特徴です。
主な特徴

• パンク時のスペアタイヤ交換作業を回数無制限で対応
• 30分以内で完了する応急対応が対象範囲
• 保険契約者本人が現場にいなくても、車両が特定できれば対応可能
• 全国どこでも対応可能

三井住友海上は、スペアタイヤ交換の回数制限がない点で利便性が高いものの、作業内容はあくまで「応急作業」に限られています。

ソニー損保

ソニー損保のロードサービスでは、パンク時のスペアタイヤ交換を無料で利用できます。さらに、契約年数によってサービス内容が拡充される点が特徴です。
主な特徴

• スペアタイヤ交換は無料で利用可能
• 契約2年目以降は「応急修理キット」を使用したパンク修理も無料対象
• 24時間365日対応
• 全国どこでも利用可能

ソニー損保は、年数を重ねるごとにサービスが充実していく仕組みがあり、長期契約者には使い勝手の良い内容となっています。

チューリッヒ保険会社

チューリッヒのロードサービスは、手厚いサポート内容で知られています。パンク時のスペアタイヤ交換も無料で、対応回数の制限がない点が魅力です。
主な特徴

• パンク時のスペアタイヤ交換を無料対応（無制限）
• 応急修理キットでの対応も可能
• 全国24時間365日対応
• レッカー移動も50kmまで無料

チューリッヒはロードサービスの対応範囲が広く、利用しやすい体制が整っているため、外出先でのトラブルにも強い保険会社です。

⇒ロードサービスが手厚い保険会社まとめ

⇒ロードサービスを比較する

利用時のポイント

自動車保険に付帯している「タイヤパンク交換サービス」は、パンクや空気漏れといったトラブルの際に非常に便利なサポートです。

しかし、安心して使うためには、いくつかのポイントを理解しておく必要があります。

ここでは、実際に利用する際に気をつけるべき点を、事前準備・利用時・利用後の3段階に分けて詳しく解説します。

【1】利用前の準備ポイント

スペアタイヤと工具の状態を確認しておく

多くのロードサービスでは「スペアタイヤがあること」が交換対応の条件です。
しかし、スペアタイヤがあっても、以下のような状態では交換ができない場合があります。

• 空気圧が著しく低下している
• 長期間使用しておらずゴムが劣化している
• ジャッキやレンチが見つからない、または故障している

保険会社の連絡先をすぐ取り出せるようにしておく

トラブル発生時には落ち着いて行動することが大切です。
迅速に連絡できるよう、次の準備をしておくと良いでしょう。

• 保険証券を車内に保管
• スマートフォンにロードサービス専用ダイヤルを登録
• 契約している保険会社のアプリをインストール（GPS機能で現在地を伝えやすい）

利用条件と無料範囲を確認しておく

保険会社によっては以下のような違いがあります。

• 無料利用の回数（無制限 or 年1回まで）
• レッカー搬送の無料距離（例：15km、50km）
• 応急作業の範囲（30分以内など）

【2】利用中のポイント

まずは安全を最優先に行動する

パンクに気づいた際は、焦らず安全な場所へ停車することが最優先です。

• 路肩や駐車場など、交通の妨げにならない場所に停車する
• ハザードランプを点灯し、後続車に注意を促す
• 夜間は停止表示板を車両後方に設置する
• 高速道路の場合は、車外に出てガードレールの外側で待機する

必ず保険会社を通して依頼する

自分で整備業者を呼んでしまうと、保険のロードサービス対象外となる場合があります。
必ず、保険会社のロードサービス窓口へ連絡し、提携業者を派遣してもらうようにしましょう。
この際、次の情報を正確に伝えるとスムーズです。

• 現在地（道路名や近くの目印）
• 車種・ナンバー・色
• パンクの状態（タイヤ1本か、複数か）
• スペアタイヤの有無

スペアタイヤは「応急用」であることを理解する

最近の車には「テンパータイヤ」と呼ばれる応急用スペアタイヤが搭載されています。
これは通常タイヤよりも小さく、耐久性・速度・距離に制限があります。

• 最高速度：80km/h以下が目安
• 走行距離：50〜100km以内
• 長距離・高速道路の継続走行は避ける

【3】利用後のポイント

応急対応後は早めに整備工場へ

スペアタイヤ交換はあくまで「一時的な措置」です。
走行に支障がない場合でも、以下の点を確認して整備工場へ向かいましょう。

• タイヤに異音や振動がないか
• ナットの緩みがないか
• 交換したスペアタイヤの空気圧が十分か

利用履歴を確認しておく

保険会社によっては、ロードサービスの利用履歴が次回契約時に影響する場合があります。特に「回数制限付き」の契約では、次の利用が有料になることもあります。

利用後は、

• 保険会社のマイページ
• 公式アプリ
• サービス利用報告書

などで利用履歴を確認しておくと安心です。

⇒【このサービス付いてます？】ロードアシスタンスサービスについて